アタリヤ農園の「彩りの良いガーデンレタスミックス」。栽培日数約30日、再生紙のプランターが付いてくる市販の栽培セットです。これを買ってきて、Raspberry Pi 5 に監視させ始めました。


日中はベランダに出して、夜は室内に取り込む。スマホで Wi-Fi 経由のローカル URL を開くと、土の様子がライブ映像で見えて、温度・湿度・土壌水分・明るさが3秒ごとに更新されていく。15分おきに自動でタイムラプス用の写真が1枚保存されて、あとから動画にまとめられる。
ぶっちゃけ、これだけのことが、ラズパイ1台と2万円前後で組めます。
私が GitHub に置いた cultivation-monitoring-system というシステムで、コードもセットアップ手順も全部公開しています。MITライセンスなので、コピーして書き換えるのも自由です。
→ https://github.com/ai-coordinator/cultivation-monitoring-system
この記事では、このシステムで何ができるのか、どんな部品でいくらかかるのか、どこで詰まったかを、実際に動かしている目線でまとめます。
ガーデンレタスミックスのセットアップ動画です。
このシステムでできること
ラズパイ1台で次の4つを同時にこなします。
- スマホでライブ映像が見える — USBカメラの映像を、同じ Wi-Fi 内のスマホ・PC から見られます。専用アプリは要りません、ブラウザでURLを叩くだけです
- 15分ごとに写真を自動保存(タイムラプス) — 撮りためた画像はブラウザから一覧で見られて、ボタン1つで mp4 動画にまとまります。発芽から収穫までの30日が、数十秒の動画になります
- 温度・湿度・土壌水分・明るさをリアルタイム表示 — Grove という配線が簡単なセンサーを使います。値は3秒おきに更新され、「適正/やや高温/過湿/乾燥」などレタス向けのしきい値で色付きラベル表示します
- 5年分の履歴をグラフで振り返れる — 24時間・1週間・1ヶ月・3ヶ月・1年の単位で切り替え可能。データは SQLite というラズパイ内のデータベースに保存され、最長5年分蓄積されます
ライブ映像と一緒に、ラズパイ本体のCPU温度・メモリ・ディスク残量も画面下に常時表示されます。何かおかしくなったとき、現場に行かずにスマホで状況が分かります。
使ったハードウェア
実際の組み立てはこんな感じです。木材2本で柱を立てて、その上にカメラとセンサーをぶら下げる構造にしました。下に再生紙プランター、土に水分センサーを刺しています。
主な部品はこれだけです。
- Raspberry Pi 5(4GBで十分)
- Raspberry Pi 公式 27W USB-C 電源
- microSDカード 32GB
- USB Webカメラ(2,000円程度のもので十分動きます)
- Grove Base Hat for Raspberry Pi(センサーを刺すための拡張ボード)
- Grove DHT11 温湿度センサー
- Grove 水分センサー
- Grove 光センサー v1.2
- 木材数本(カメラとセンサーを固定する台)
Grove というのは Seeed Studio が出している「ケーブル1本で繋がる」シリーズのセンサーで、半田付けが要りません。線の色を間違える心配もなく、初めての人でも扱いやすい構造です。
部品の合計はおよそ 2万円前後 です。Raspberry Pi 5 が約11,000円、Grove Base Hat が約1,500円、センサー3種で約1,500円、カメラが2,000円、その他電源・SDカード・木材を合わせるとこの金額に収まります。
私の手元では、防災用のモバイルバッテリで動かそうとしましたが、消費電力的に 1日もちません。屋外設置でも結局AC電源が必要になります。最初からコンセントが届く場所に置く前提で考えた方が良いです。


構築にかかる時間
ゼロから「OSを焼く → セットアップ → センサー配線 → アプリ起動」までを通して、約5時間 で動くところまで到達できました。
ハマりやすいのは Grove のセンサーを動かすための grove.py というPythonライブラリのインストールです。普通に pip install grove.py で入れると、Pi 5 では動かない RPi.GPIO を巻き込んでしまいます。次のように --no-deps を付けて GitHub から直接入れる必要があります。
pip install --no-deps --force-reinstall "git+https://github.com/Seeed-Studio/grove.py"
このあたりは README にも書いてあります。私自身ここで一度詰まりました。Pi 4 から Pi 5 に変わったタイミングで GPIO 周りの作法が変わっており、ネット上の情報も Pi 4 時代のものが混ざっているので、迷子になりやすい部分です。
動かしてみて分かったこと(運用2日目の所感)
これを書いている時点で、栽培2日目です。まだ芽は出ていませんが、すでにいくつか発見があります。
タイムラプスの楽しみは、撮り始めてすぐに来ます。 数時間分の画像を並べて眺めるだけでも、「今日は土が乾いた」「光の角度が変わった」が見えます。30日後に発芽から収穫までを数十秒で振り返れると思うと、毎日見るのが楽しみになります。
センサーの値を眺めるのも、思っていたより面白いです。 たとえば私の環境では、土壌水分が「過湿」と出ています。水をやり過ぎたわけではなく、再生紙プランターが湿度を保ちやすい構造のせいだろう、というのが今のところの仮説です。気温が23℃で「やや高温」と出ているのは、レタス向けのしきい値(15〜22℃が適正)に対しての話なので、これは想定内です。
5年分のデータが残ることの意味は、後から効いてきます。 写真と環境データを付け合わせて、「水をやり過ぎた週は徒長した」「曇りが続くと色付きが悪かった」のような仮説検証ができるようになります。これだけのデータを自分の手元に貯められる仕組みが2万円で組めるのは、ちょっと前まで考えられなかったことです。
わざわざ自作する楽しさ
スマート農業のシステムは市販品もあって、機能もサポートもしっかりしています。それを買う選択は当然アリです。
ただ、自分で組み立てて、コードが全部読めて、改造もできて、データが手元に残る ── この距離感が、触っていて素直に楽しいです。「センサーをもう1つ増やしたい」「カメラの位置を変えたい」「グラフの色を変えたい」と思った瞬間に手が動かせます。自作で2万円なら、家庭園芸の延長としても、ちょっとした実験用としても、気軽に試せる距離にあります。
ここから先の発展
このシステムは「入り口」として作っています。興味があれば、こんな方向に伸ばせます。
- クラウド連携で外出先からスマホで見る — 今は Wi-Fi 内からしか見られませんが、Cloudflare Tunnel や Tailscale を使うと、家からでも畑のラズパイにアクセスできます。複数拠点を1画面でまとめて見るところまで広げられます
- AI画像認識で発芽カウント・葉面積測定・病害検知 — タイムラプスで撮りためた画像に、YOLO や SAM のような物体検出・領域抽出のモデルを通すと、「何個発芽したか」「葉がどれくらい広がったか」「病気の葉があるか」が自動で数えられます
- CSVエクスポートして表計算ソフトで分析 — 蓄積した5年分のセンサーデータを Excel や Google スプレッドシートに出せば、自分なりの分析や、栽培条件を変えた比較実験に使えます
- 水不足になったら通知 — しきい値を超えたら LINE やメールで通知するだけのシンプルな仕組みなら、ハードを増やさず実装できます。自動潅水まで作ると配線とリレー制御で複雑になるので、まずは「通知」から始めるのが現実的です
このあたりは、最初から全部組み込もうとすると挫折しやすいので、栽培1サイクル動かしてから「次はこれを足そう」くらいの温度で十分です。
まとめ
- アタリヤのガーデンレタスミックス × Raspberry Pi 5 × Grove センサー × USBカメラで、ライブ映像・タイムラプス・環境センサー・5年履歴グラフ がブラウザから見られる栽培モニタリングシステムを作った
- 部品の合計は 約2万円、構築は約5時間。再現性は十分
- 自分で組み立てて、コードが読めて、改造もできる距離感が、触っていて素直に楽しい
- コードは GitHub で公開済み(MITライセンス)。クラウド連携・AI画像認識・通知システムなど、ここから先の発展も自由
家庭園芸の観察記録としても、ちょっとした実験用としても、あるいは誰かに何かを教える題材としても、自由に使ってもらえれば嬉しいです。
この記事の技術を、現場で実装したい方へ
AI×IoTの技術顧問として、月額契約で継続伴走しています。PoC設計・技術判断・組織設計・ベンダー管理・実装支援まで、現場で動くまで一緒に進めます。受託開発(請負)ではありません。
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