AIで最初に消えるのは外注・下請け・新卒という私の予測|「周回遅れだから日本は大丈夫」が通用しない理由

AIで最初に消えるのは外注・下請け・新卒という私の予測|「周回遅れだから日本は大丈夫」が通用しない理由

「AIが仕事を奪う」という話は、もう聞き飽きたかもしれません。私が今回書きたいのは、その一歩先です。

私はAI×IoTの技術顧問として、中小企業のAI導入を支援しています。その立場から、2026年6月の時点で、これから3年で日本の雇用と産業がどう動くかを、できるだけ客観的なデータだけで予測して残しておきます。あとで「あのとき、こう予想していた」と読み返せるようにする意味も込めています。

先に正直に言っておきます。私はこの先行きを、かなり悲観的に見ています。ただし「全部なくなる」という煽りとは違う形の悲観です。何が、どの順番で、どれくらいの速さで来るのか。そこを解像度高く書きます。

結論を先に書きます:日本は「失業」ではなく「入口」と「外注」から崩れる

最初に結論です。これから日本で最初に起きるのは、失業率の急上昇ではありません。

起きるのは2つです。1つは、新卒・若手の「入口」が静かに閉じること。もう1つは、大企業が抱える「外注・下請け」が干上がることです。

なぜそうなるのか。大企業は社員を簡単には切れません。日本の解雇規制と人手不足のなかで、正社員のリストラは最後の手段です。だから企業がコストを削るとき、刃が最初に向かうのは、切りやすいコスト、つまり外注費と新規採用です。

つまりAIの衝撃は、まず「社外」と「これから入ってくる人」に出ます。すでに中にいる人ではありません。 この構造を押さえると、これから書く話が全部つながります。

まず、3年後を決めるたった1つのエンジン

将来予測がブレるのは、語る人が「AIの伸び方」を曖昧にしたまま職業の話を始めるからです。ここを1点に固定します。

AIの能力をいちばん分かりやすく測っているのが、「人間の専門家なら何時間かかる仕事を、AIが任せられるか」という指標です。これを継続計測している研究機関のデータでは、この“任せられる仕事の長さ”がおよそ7か月ごとに倍になってきました(METRの計測)。

そして直近の2024年から2025年にかけては、倍増のペースが約4か月ごとに加速しています。最新の高性能モデルは、人間の専門家でおよそ12時間かかる仕事を、一定の成功率でこなせる水準に来ました。このペースが続けば、2027年には「1か月かかる仕事」を丸ごと任せられる水準に届く、という推計です(AI Digest の整理)。

ここが本質です。今は「数時間で終わるタスク」を切り出してAIに渡しています。3年後は、その単位が「数週間から数か月かかるプロジェクト」に変わります。

そうなると、これまで切り出して社外に発注していた仕事、つまり受託・下請け・コンサルの下働き工程が、丸ごと社内のAIに置き換わります。私が「外注から消える」と言うのは、この能力の伸び方からくる必然です。

「もう起きている」のは私の感覚ではなく、データです

3年後を語る前に、現在地をデータで固定します。

スタンフォード大学の研究チームが、2500万人ぶんの給与データを使って実証した結果があります。AIの影響を受けやすい職種では、22歳から25歳の若手の雇用が2022年以降で約13%減りました。ソフトウェア開発に限ると、若手の人数は約2割減っています。一方で、同じ職種でも30歳以上はむしろ増えているのです(スタンフォードのレポートTIMEの解説)。

ベテランは守られ、入口だけが閉じている。これが世界規模で、もう数字に出ています。

AIの使われ方そのものも見ておきます。実際の利用データでは、AIは今のところ「人の作業を奪う」より「人を手伝う」使い方のほうが多数派です。割合でいうと、手伝う使い方が約57%、置き換える使い方が約43%です。ただし置き換える側の比率は、じわじわ上がり続けています。そして約半数の職種で、すでに4分の1以上の作業がAIで実行されており、プログラマーに至っては約75%に達しています(Anthropic Economic Index)。

今は「人+AI」で済んでいる。けれど能力曲線が伸びるほど、この比率は置き換える側へ傾きます。3年後には、57%と43%が逆転していてもおかしくありません。

コンサルが先に痩せています

「AIで消える仕事」を遠い未来の話だと思っている人ほど、足元で何が起きているかを見落としています。分かりやすいのがコンサル業界です。

大手コンサルでは、2026年に約10%(3000人から4000人規模)の人員削減が動いています。削られているのは、若手のリサーチ工程やバックオフィスです。AIが、若手チームが数週間かけていた調べものを数時間で片づけてしまうからです(The HR Digest)。

これは1社だけの話ではありません。複数の大手で採用減速や人員調整が広がり、ある大手は世界で5600人規模の人員減となりました(TheStreet)。

ここで大事なのは、コンサルという業態が消えるわけではない、という点です。消えているのは「安い若手を高い単価で請求する」というピラミッド構造の下半分です。最終的な判断、責任、人間関係を担う上の層は残ります。あとで書く「大企業は再配置で残る」のと同じ構造です。上は残り、下と外が消えます。

大企業は人を切れない。だから「外注」が切られます

ここが今回いちばん伝えたいところです。

日本の大企業は、AIで生産性が上がっても、その分の正社員をすぐには切れません。代わりに何をするか。外注を切ります。

理由はシンプルです。外注を切るのは「雇用」の判断ではなく「契約」の判断だからです。契約を更新しなければいいだけで、解雇規制も終身雇用の慣行も、稟議の重さも関係ありません。だから、その大企業自身がまだAIをほとんど使っていなくても、競合がAIで安く速く出した瞬間、あるいはAIに強い新しい業者に値段で殴られた瞬間、外注の発注は一気に削られます。

AIの導入で実際にいちばん大きな効果が出ているのも、この「外部委託費の削減」だと報告されています。派手な使い方より、地味な外注費カットがいちばん効くのです。

そして、この刃が向かう先の体力は、もう限界に近づいています。2025年度の企業倒産は1万425件で4年連続の増加、2年連続で1万件を超えました(帝国データバンク)。下請けの多くは、コスト上昇を価格に転嫁できず、転嫁率は**42.1%**にとどまっています。すでに弱っているところに、AIという二の矢が刺さる構図です。

同じ「下請け」でも、生死は真逆に分かれます

ただし「下請けは全部危ない」と一括りにすると、予測を外します。下請けは2種類に割って見る必要があります。

危ないのは、「人の作業時間」を売っている下請けです。人手の受託開発の末端、データ入力、定型事務、一次対応のコールセンター、調べもの代行。これらはAIが作業そのものを消した瞬間に、売り物がなくなります。

実際、ソフト開発の受託市場はもう割れ始めています。案件の引き合いは、ここ1年で「作れる人」から「AIを使って複数の仕事を並行でさばける人」へ変質しました。AIに強い人材は高単価で取り合いになる一方、末端は逆に干上がり始めていますHeyday の市場データQiita の分析)。これは3年後ではなく、今です。

一方で、生き残る、むしろ伸びるのが、「モノや技術」を売っている下請けです。モーター、減速機、コンデンサのような部品メーカーがこれにあたります。彼らが売っているのは作業時間ではなく、現物の性能と信頼性です。AIは設計や検査を効率化こそすれ、現物の供給そのものは消せません。

それどころか、AIが体を持つ方向(ロボットや自動機械)に進むほど、その体に必要な高精度の部品の需要は増えます。ロボットの関節に使う高精度の減速機は、世界の最上位を日本のメーカーが握っています(TrendForceの分析)。人型ロボット向けの減速機市場は、2024年の約3900万ドルから2032年に約5億8000万ドルへと、十数倍に伸びる予測です(Intel Market Research)。電子部品でも、ある日本メーカーは特定のコンデンサで世界シェア約4割を握っています(業界分析)。

同じ下請けでも、売っているものが「時間」か「モノ・技術」かで、生死は真逆に分かれます。 ここを混同すると、自社や取引先の立ち位置を読み違えます。

「周回遅れだから日本は大丈夫」が、今回は通用しません

ここで反論が来そうです。「日本はAI後進国で、海外より何年も遅れている。だから影響が来るのも何年も先だろう」と。

私も最初はそう思っていました。けれど、今回の遅れは過去の遅れと構造が違います。

パソコン、インターネット、クラウド。過去の技術が国ごとに「何年も遅れて」普及したのは、普及そのものに物理的な手間があったからです。設備投資、機材の調達、システムの組み込み、業者選び、研修。技術を国内に運んで根付かせる工程に、年数がかかりました。

ところが今のAI、とくに業務を任せられるタイプのAIは、この手間がほぼ全部消えています。月額契約で即日使え、言語を選ばず、組み込み工事もいらず、しかも買い替えなしに勝手に賢くなります。地方のエンジニアが今日から使い始めれば、今日から世界の最前線に並べます。「技術を日本に届ける」という工程が、そもそも存在しないのです。

しかも能力の進化は世界同時に届きます。日本にだけ性能を落としたAIが配られるわけではありません。実際、業務を任せるタイプのAIへの企業の支出は、2026年には企業のIT支出全体の1割から1.5割を占めるまでに急拡大しました。18か月前なら考えられなかった水準です。2026年4月が、試験導入から本格運用へ移る転換点だったと整理されています(FifthRow の分析)。

つまり「周回遅れ」という言葉に安心してはいけません。能力は世界同時に届き、外注を切るのは契約一つの判断です。遅れているのは「社内の使いこなし」だけで、外注が干上がる速さは、日本の遅れとほぼ関係なく進みます。

「後進国だから有利」は、半分は気休めです

「遅れているからこそ、先行者の失敗を避けて、おいしいところだけ取れる」という見方もあります(Bloomberg の論考)。

これは半分だけ本当です。賢く待てる「採用する側」には有利に働きます。けれど、淘汰される「される側」には、まったく当てはまりません。能力が世界同時に届く以上、自社の遅さはもう守りの壁ではなく、AIに強い競合に殴られる弱点です。

「日本でChatGPTのような道具を試した人は5人に1人」という数字もよく引かれます。これは消費者の片手間の利用を測っているだけです。すでに本格運用が始まっている企業向けや開発現場の速さを、この数字は覆い隠します。ここを「まだ時間がある」と読むと、足をすくわれます。

日本での効き方は、失業率には映りません

では日本はどうなるか。ここが他国と違う、いちばん大事なところです。

日本は今、失業率が約2.6%と非常に低く、むしろ深刻な人手不足です。日銀の調査でも、人手不足感はこの30年で最も強い水準にあり、2040年には1100万人規模の労働力不足が見込まれています(日本銀行の講演資料)。

この「人が足りない」という土台があるので、日本では海外のような「AIによる大量失業」は、失業率という数字には出にくいのです。はじき出された人は、失業ではなく別の場所に流れます。

代わりに、これから3年で立ち上がるのは次のような形です。

新卒・若手の入口が、構造的に閉じます。すでに、ある大手金融グループは事務職で最大5000人ぶんの業務を減らす方針で、複数の大手が新卒採用を絞り始めています。経営層の多くが「いずれ新卒レベルの仕事はAIで代替できる」と答えています。同時に、新聞は「大企業の新卒採用減は、中小企業にはチャンス」とも書いています(日本経済新聞)。

つまり、はじき出された人材は、失業ではなく「大企業から中小への移動」に流れやすい。受け皿が人手不足なので、統計上の失業率は低いままになりやすいのです。

その結果として残るのは、数字に映らない痛みです。若い世代にとっての「良い就職先の椅子」が減ること。受託や事務といったジュニアの仕事が薄くなること。守られた中高年と、入口を失った若年層のあいだに、世代の断層ができること。

「日本経済が大変」というより、「指標には出にくい地殻変動」が、私の予測の核です。 そして、その変動が始まるのは3年後ではなく、外注とジュニアの層に関しては、もう来年からです。

それでも「全部なくなる」は誤りです

ここまで悲観的に書いてきましたが、「仕事が全部なくなる」というのは言い過ぎです。悲観の輪郭を、正確に描いておきます。

3年というスパンで、残る、あるいは増える仕事は、はっきりしています。

1つ目は、体を使う仕事です。介護、建設、製造現場。人型ロボットはまだ実用面の壁が大きく、現場の人手をすぐには置き換えられません。

2つ目は、最終的な判断、責任、人間関係を担う仕事です。コンサルの上層が残るのと同じ理屈です。

3つ目は、現物を売る仕事、つまり部品メーカーのような「モノと技術」を供給する側です。

4つ目が、いちばん大事です。AIを社内で使いこなし、自社の仕事を内製化できる人です。日本企業が今いちばん足りないと答えているのが、まさに「社内でAI導入を進められる人材」です(OECDの調査)。

消える仕事の話ばかりが目立ちますが、足元では「AIを回せる人」が決定的に足りていません。ここに回れるかどうかが、これからの分かれ目です。

3つのベクトル、3つの速度

ここまでを1枚に整理します。「日本は何年遅れ」という1つの数字で語るのをやめて、3つに分けて見るのが正確です。

1つ目は、AIの能力と道具です。これは世界同時で、遅れはゼロ。もう来ています。来年は確実に今より賢くなります。

2つ目は、外注・下請け・受託の淘汰です。これも遅れはほぼゼロ。契約一つの判断なので、来年から本格化します。あなたが取引先で感じる「発注が減った」「単価が下がった」は、ここです。

3つ目は、正社員の内部再編と新卒入口の閉鎖です。ここだけは、日本の雇用慣行のぶん、まだ少し遅れます。とはいえ大手の動きを見ると、その遅れも縮んでいます。

速いベクトルから順に効きます。だから「来年から」と「3年かけて」が、同じ現象の中に同居します。 崖は一枚岩ではありません。けれど、外注とジュニアにとっての崖は、もう始まっています。

私の予測(2026年6月時点の記録として)

ここに、現時点での私の予測を、時間軸つきで残しておきます。あとで答え合わせをするためです。

2026年後半から2027年にかけて。外注・受託・下請けの「人の時間を売る」業態で、発注減と単価下落がはっきり広がります。新年度の予算と採用計画にAI前提が織り込まれ、その影響が表面化するのは、新年度の始まる時期、つまり春以降です。

2027年から2028年にかけて。新卒・若手の採用枠が構造的に細ります。失業率は低いまま、若年層の就職の質が静かに下がります。大企業の正社員は再配置とリスキリングで吸収され、表向きの雇用は維持されます。

そのあいだずっと。現物を売る部品メーカーと、AIを社内で回せる人材は、むしろ引く手あまたになります。

注意点も正直に書きます。これが一夜で起きる崖ではない理由は、能力があっても、企業がそれを「作り直した仕事のやり方」に変換するのに時間がかかるからです。試験導入の多くは、成果につながる前でつまずきます。だからこれは、垂直に落ちる崖ではなく、今まさに急勾配に差しかかったなだらかな坂です。坂の入口に、もう立っています。

では、どちら側に回るか

ここまで読んで、不安になった方もいると思います。けれど、この変動は、見方を変えれば中小企業にとっての追い風でもあります。

大企業がAIで内製化を進め、外注を減らす。その同じ流れのなかで、「AIを自社で回せる中小企業」は、これまで大企業や専門業者に頼っていた仕事を、自社の手元で安く速く回せるようになります。淘汰される側ではなく、AIを使う側に回れるのです。

私が技術顧問としてやっているのは、まさにそこの伴走です。AIを使って自社の仕事を内製化したい中小企業の隣に立って、何から始めるか、どこでつまずくか、どう続けるかを一緒に決めていきます。淘汰される側を、AIを回す側へ引き上げる。それがこの3年でいちばん価値のある仕事になります。

まとめ

  • これから日本で最初に起きるのは、失業率の急上昇ではなく、新卒・若手の「入口」が閉じることと、外注・下請けが干上がることです。大企業は人を切れないので、刃はまず社外と新規採用に向かいます。
  • 同じ下請けでも、「人の作業時間」を売る業態は淘汰され、「モノや技術」を売る部品メーカーはむしろ伸びます。売っているものが時間かモノかで、生死が真逆に分かれます。
  • 「周回遅れだから日本は大丈夫」は、今回は通用しません。能力は世界同時に届き、外注を切るのは契約一つの判断だからです。淘汰される側にとって、遅れは守りの壁になりません。
  • 日本の変化は失業率に映りにくく、世代の断層という形で出ます。そして外注とジュニアの層に関しては、3年後ではなく、もう来年から始まります。

「うちの会社や取引先は、淘汰される側か、AIを回す側か」。そこを一度、外の目で整理したい方は、無料の30分オンライン診断で一緒に棚卸しできます。動き出せる人だけが、この3年を味方にできます。

この記事の内容について、現場で整理したい方へ

AI×IoTの技術顧問として、月額契約で継続伴走しています。PoC設計・技術判断・組織設計・ベンダー管理・実装支援まで、現場で動くまで一緒に進めます。受託開発(請負)ではありません。

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About The Author

Hideki
東京大学発AIスタートアップでロボット開発室室長・画像解析室室長・動画解析室室長を務め、画像認識関連のAI特許を在籍中に3件取得。その後、KDDIグループでプロダクトリーダーとして自然言語処理パッケージの自社開発を経て、現在はAGRIST株式会社の執行役員CTO 兼 VPoEとして、農業の人手不足解決に向けた収穫ロボットの開発組織を統括しています。AI・ハード・エレキ・通信・クラウド・IoTまでを一気通貫で設計できる視点を強みに、性能だけでなく「感動やワクワク体験」までデザインできるロボットの研究を進めています。並行して、AI coordinatorとして企業のAI導入・教育機関のAI授業・地域の技術相談を月額契約で継続伴走しています。

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