AI活用法の変え方|チャットから会社を回すAIエージェント8体へ、きっかけはいつも『困ったこと』だった

AI活用法の変え方|チャットから会社を回すAIエージェント8体へ、きっかけはいつも『困ったこと』だった

「どんな風に自分の中でAI活用法を変化させていくのか。きっかけとそのやり方」

2026年9月25日、福岡で「創業してAIエージェントで会社を動かしてる話」という題で50分話しました。終わったあとの参加者アンケートに、この一文が書かれていました。

当日の話は、いまの形の説明が中心でした。営業・経理・総務・広報・法務税務の点検を、8体のAIエージェントに分けて任せている、という話です。

ただ、この形は最初からあったものではありません。ここに来るまでに、AIの使い方を何度か変えています。この記事では、その順番と、変えたきっかけを書きます。

先に結論を書きます。変えたきっかけは、毎回「いまの形で困ったこと」でした。

2年前は、チャットでコードを書かせていた

AIを仕事に使い始めたのは、2年ほど前です。ChatGPT(GPT-4系)に、Webアプリのコードを書かせていました。

いまでいうバイブコーディングです。チャット画面で作りたいものを伝え、返ってきたコードを使う、という使い方でした。

この段階のAIは、チャットの中で答えを返すところまででした。

転機は、コードを1行も書かずにSNSアプリができたこと

今年に入って、写真と動画を投稿するSNS(Instagramのようなもの)を、技術検証のためにWebアプリで作りました。使ったのはClaude Codeです。

結果は次のとおりです。

  • 3日で、動く最初の形ができた
  • 約1.5か月で、コメント・フォロー・ログイン・お気に入り・表示順・動画再生の効率化まで揃った
  • 私が自分で書いたコードは0行
  • できたコードはテスト込みで13.3万行、ファイルは928本

2年前と変わったのは、AIの文章力だけではありませんでした。AIが、パソコンの操作そのものを担えるようになっていました。 命令を実行し、ブラウザを操作し、クラウドへの公開まで、会話の指示だけで進みます。

この規模を、大きな不具合なく作れてしまった。そのとき思ったのは、「AIで、割と何でも管理できるのではないか」ということでした。

コードを書かせることと、仕事を管理させることは、同じ延長線上にあります。どちらも「やることを言葉で決めて、任せる」だからです。

このSNSアプリは検証目的で作ったもので、本番の環境は2026年9月に止めています。

同じ春に、計画の管理もAIと始めていた

コードの話と並行して、もう1つ使い方が変わっていました。

2026年3月29日、独立に向けた計画をAIと壁打ちし、その記録を残し始めました。翌日の記録には、こう書いてあります。労働集約型の仕事の限界を考えていたら、「仕組み化とは、組織運営そのものだ」と気づいた、と。

ここから、計画の表とその日の記録を1つのフォルダに置き、AIに毎回読ませて相談する形が始まりました。

AIは、スケジュールもタスクも、人間よりきれいに管理しました。感情はありません。けれど、指摘している内容は正しい。

頼りなく相談してくるPMより、進むべき方向を明確にして、実行できる計画を出してくるPMのほうが、ずっと仕事は進みます。 AIはそちらでした。

最初の形は「毎朝報告してくる1体のアドバイザー」だった

フォルダを読ませて相談する形は、5月には「毎朝、自動で動く」形になっていました。

毎朝決まった時刻に、AIのアドバイザーが1体動きます。計画の表と直近3日分の記録、動いている案件のフォルダを読み、その日にやることを最大5件出してきます。

同じ時期に、公募や副業サイトの新着を毎日見て回る仕組みも動かしていました。自治体の募集、マッチングサイトの案件、研修講師の募集などです。

ここで、AIの使い方は大きく変わりました。こちらが聞きに行くのではなく、朝起きると向こうから報告が届いている。 ここが、次の形へ広がる入口になりました。

担当を分けずに任せると、同じ提案を繰り返しはじめた

ところが、任せることが増えるほど、無理が出てきました。

2026年8月11日の朝の報告には、こう書かれていました。「8/10にも同じ提案をしたが未着手」「3日連続で未着手」。

同じ時期、巡回の記録は1日分が数千字の段落になっていました。誤った場所に置かれたファイルについて、確認してほしいという依頼が「本日で9回目」と書かれた日もあります。

AIが怠けていたわけではありません。担当の区切りがないまま、計画の管理も、案件の巡回も、ファイルの整理も、確認の催促も、1つのフォルダの中で回っていたのです。

一人で何でもやる形は、スケールしません。限界が必ず来ます。それは、人でもAIでも同じでした。

役割と権限と作業場所を分けたのは、人の組織と同じ理由

2026年8月11日、仕組みを作り直しました。

それまでのフォルダは凍結し、新しいフォルダを作りました。翌8月12日には、担当ごとの作業場所、担当ごとの決めごとの記録、担当どうしの申し送り箱、報告書の置き場を、一度に整えています。

なぜ分けたのか。理由は、普通の組織運営と同じです。

組織を運営するうえで、役割と権限と作業環境を分けることは、効率のためにも、ガバナンスのためにも必要です。誰が何をしてよいかが決まっていなければ、チェックする人もいなくなります。

いまは、次の8体が分かれて動いています。

担当何をするか頻度
個人事業 経理証憑の整理、複式簿記での記帳、入金確認週次
個人事業 総務個人名義の契約・保険・雇用の期限管理週次
法人 経理証憑の整理、記帳、残高の突合、出金伝票週次
法人 総務法定期限の一元管理と棚卸し週次
法務・税務点検両事業の適法性を、官公庁の一次情報で審査週次
広報サイトの記述と実態のずれを見つけ、修正依頼を書く週次
営業公募・入札・マッチングサイトの探索と案件管理日次
セルフブランディングSNSと個人サイトの巡回、数値の記録日次

8体とも、中身は日本語の文書です。担当ごとの手順書13本で3,665行、共通のルール4文書で3,612行あります。私はこの仕組みのためにプログラムを書いていません。

担当の分け方や記録の残し方の設計は、「良い感じにやっておいてよ」ではAIは動かない|経理も総務も契約審査もAIエージェントに任せて会社を回す設計に詳しく書いています。

会社の設立そのものも、この流れの中でAIと進めました。商号調査から定款、登記、税務署・県・市への届出までのチェックリスト38行を、AIが作り、AIが進捗を管理しました。その経緯はAI駆動型で株式会社を設立する方法|費用の通説3つの誤りと、AIが間違えた9件にまとめています。

作り直した後も、毎日直している

分けたら完成、ではありませんでした。

2026年8月8日から9月21日までに、文書を658回直しています。ならすと1日約15回です。

何の記録回数
フォルダ地図の更新78
権限表の更新70
タスク定義の変更31
線引きルールの更新12
各担当との決めごと467

毎朝、各担当からの報告を読みます。判断が要ることは「未決」として上がってきます。私がそれを決め、決めたことを記録に残します。次の実行から、その決めごとが全員に効きます。

一回作って、あとは勝手に何でもやる、ではありません。人に毎日仕事を頼み、直し、会社がよくなっていく流れと同じです。

変えたきっかけは、どれも実際に起きたことだった

アンケートの問いは「きっかけ」でした。記録を見返すと、使い方を変えたきっかけは、どれも実際に起きたことです。

古い内容で、新しい内容が上書きされた。 2026年8月14日、別の作業が古いコピーでルール文書を書き戻し、同じ日の改訂が消えました。エラーは出ません。気づいたのは、消えた記述を探したときです。それ以来、ルール文書を直すときは、書き込む直前に読み直すと決めています。

朝の報告が、営業担当と食い違った。 毎朝メールの見出しから「要対応」を拾う報告を別に動かしていました。ところが、同じ情報源を台帳と照らして判定している営業担当と、判断が食い違いました。2026年9月5日、この朝の報告は止めました。

毎日調べても、同じ顔ぶれになった。 画像処理の技術動向を毎日調べさせていたところ、毎回ほぼ同じ結果になりました。そこで週1回に落としました。

動かす時刻で、使える量が変わった。 早朝2時に動かした日に、利用が混み合う時間帯の警告が出ました。そこで開始を4時30分に決め、そこから順番に並べ直しています。

増やすだけでなく、減らす判断も同じくらいあります。どれも「やめた」ではなく、「起きたことを見て、やらないと決めた」ものです。

育てると、硬くなる

658回直してきて、いま困っていることもあります。

各担当との決めごとの記録は467行あります。そのうち「以後〜しない」で閉じているのが130行。「こうなったら考え直す」と書いてあるのは19行です。

指摘する、AIは素直に受け入れる、ルールになる、再発は減る、ルールが増える、融通が減る。この順番で、AIは硬くなっていきます。

抵抗する部下なら、ルールは定着しません。AIは全部受け入れて、全部守ります。素直だから、硬くなるのです。

新しい案を広げたいときに、「以前やらないと決めましたよね」と過去を持ち出して閉じにくる。最近、いちばん増えているのがこれです。

次に変えるのは、担当の新陳代謝

では、次に何を変えるか。

人の組織なら、会社のフェーズが変われば、人を入れ替えます。新陳代謝は健全なことです。

AIも同じだと考えています。硬くなった担当を、ルールを足して直し続けるのではなく、フェーズが変わったら担当ごと作り直す。

正直に書くと、まだ作り直した担当はありません。 いまは、そうするべき時期が来ていると感じている段階です。

使い方を変えてきた順番を振り返ると、毎回同じでした。いまの形で困ったことが起き、その困りごとが次の形を教えてくれました。

チャットの次の一歩は「毎朝、報告させる」こと

アンケートの問いに、いちばん短く答えるならこうです。

いまチャットでAIを使っているなら、何か1つ、自動で処理させてみてください。 たとえば、毎朝調査結果を報告させる。

それだけで、次のステップに広がります。

私の場合もそうでした。こちらから聞きに行っていたものが、朝起きると向こうから届くようになった。そこから、任せる範囲が広がっていきました。そして、任せることが増えたときに限界が来て、担当を分ける必要が出てきました。

最初から8体を目指す必要はありません。社員を一人雇うつもりで、まず1体です。2体目から、それぞれの書き込み先を決める設計が必要になります。

私が技術顧問として最初にやること

AIエージェント運用の立ち上げを伴走するとき、最初の回でやるのは、運用の設計図を描くことです。誰が何を担当し、何をしてよくて、どこに書くか。人を雇うときと同じことを、文書で決めます。

そのうえで、動く1体目を担当者の方と一緒に作ります。毎朝報告が届くと助かる仕事を1つ選び、その1体に次の3つを決めます。

  1. 何を読んで、何を報告するか(仕事の手順)
  2. いつ動くか(決まった時刻に自動で動かす設定)
  3. どこを読み、どこに書くか(作業場所)

この3つが1周すれば、あとは担当者の方が自分の仕事に合わせて作り直せます。2体目からは、担当どうしが互いの作業場所を壊さないよう、書き込み先の線引きを一緒に決めます。

なお、つくばみらい市では、この1体目を2時間で一緒に作る少人数の会も開いています。案件フォルダを読んで、止まっている案件を毎週月曜に報告してくる営業エージェントを1体作ります。

自分の営業エージェントを、2時間で1体つくる(Peatix)

まとめ

  • AIの使い方は、チャットでコードを書かせる形から始まり、毎朝報告してくるアドバイザーへ、そして役割ごとの8体へと変わった。
  • 変えたきっかけは、毎回「いまの形で困ったこと」だった。担当を分けずに任せると、同じ提案を繰り返しはじめた。
  • 一人で何でもやる形は、人でもAIでもスケールしない。 役割と権限と作業場所を分けるのは、普通の組織運営と同じ理由。
  • チャットの次の一歩は、何か1つを自動で処理させてみること。 毎朝報告させるだけで、次に任せられるものが見えてくる。

「チャットでは使っているが、その先に進めていない」「まず1体目を何にするか決めたい」という方は、無料の30分オンライン診断で、最初の1体を一緒に選べます。

この記事の内容について、現場で整理したい方へ

AI×IoTの技術顧問として、月額契約で継続伴走しています。PoC設計・技術判断・組織設計・ベンダー管理・実装支援まで、現場で動くまで一緒に進めます。受託開発(請負)ではありません。

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About The Author

Hideki
AI coordinator株式会社 代表取締役/東京海洋大学 産学官連携研究員。AIロボティクスのスタートアップで執行役員CTO 兼 VPoEとして収穫ロボットの開発組織を統括(2026年7月まで)。画像認識関連のAI特許3件取得・1件出願中。現在はAI・ロボティクス・IoTの現場実装を、月額の技術顧問契約で「現場で動くまで」伴走しています。
会社概要 → www.ai-coordinator.co.jp