Windowsに「世界へ公開」ボタンが付く日が来ます。その瞬間、AIは一気にキャズムを超える。これまでのAIの進化スピードを考えると、来年にはそうなると私は予想しています。
技術を持っていない人でも、思いついたアプリを、そのまま世界に公開できるようになる。世の中の景色はそこまで変わります。大げさな話ではありません。条件はもう揃っていて、あとは最後のひと押しを待つだけの状態です。
今回はまず「世の中がどう変わるか」を書きます。そのうえで、その変化が仕事をどう動かすのか、自分はどちら側に立てばいいのかを、最後に書きます。
まず、来年こうなる:技術がなくてもアプリを世界に出せる
今のバイブコーディング(AIに作らせる開発)は、作るだけなら誰でもできます。壁になっているのは、作ったものを世の中に「公開する」ところです。
しかも作っている途中で不具合は次々出ます。機能が増えるほど、不具合も増える。それを乗り切って公開まで持っていくには、システムの知識が要ります。私の場合は開発用のソフトを使い、Azure(マイクロソフトのクラウド)の知識や操作も分かるので、何度も乗り切って公開まで自分で回せます。でも普通の方は、そこを知りません。ここが、いまの最後の壁です。
これがWindowsのCopilotに、世の中向けのサービスとしてそのまま組み込まれた瞬間に変わります。
「このアプリを世界に公開しますか」とポップアップが出て、「はい」「はい」と進める。「費用はこれくらいです」と表示され、納得すれば契約まで完了する。Azureの知識がなくても、Webアプリを世界中に一気に公開できる。これまでのAIの進化スピードを見れば、ここに到達するのは時間の問題だと予想しています。
技術がなくても、思いついたものをそのまま世界に展開できる。エンジニアからほど遠い事務職の方でも、自分用のアプリを作って公開できる。来年にはそういう景色になると私は読んでいます。
なぜ「来年」と予想するのか:キャズムを超える条件
新しい技術が一般層まで一気に広がる境目を「キャズム」と言います。これを超える瞬間は、たいてい2つの引き金でしか起きません。大きなUXの変化か、ハードウェアの変化です。
いまは、UXの変化がすぐ起こせる条件が揃っています。
多くの会社のパソコンがWindowsで、そこにCopilotが乗っていきます。OSを握る会社は、新しい体験を全ユーザーに一斉に配れます。「作る」だけでなく「公開する」までを、ポップアップ数回の操作に変えられる。
技術がなくてもWebアプリを世界中にいきなり展開できる。それを可能にするのが、Windowsという広く普及したOSの存在です。キャズムを超えるのは、遠い未来の話ではありません。 普及のスピードを甘く見ない方がいい。
では、仕事はどう変わるのか
ここから、この変化が仕事に何をもたらすかを書きます。
結論から言うと、消える仕事と、むしろ価値が上がる仕事が、はっきり分かれます。「エンジニアが要らなくなる」という雑な話ではありません。分かれ目を正しく見れば、むしろチャンスの方が大きい。
まず、消えない仕事から整理します。
消えない仕事:正確性と無停止が命の領域
絶対に消えない領域があります。ここを誤解すると判断を間違えます。
24時間365日、絶対に止めてはいけないシステム。社会インフラや大企業の基幹系(会社の根幹を支えるシステム)です。こうしたものが、バイブコーディングで気軽に置き換わることはありません。
顧客データベースや、金融のお金を扱う領域も同じです。とにかく正確性がシビアに問われる場所で、「だいたい動く」では一発でアウトになります。
正確性と無停止が命の領域は、これからも人とお金がかかり続けます。 ここは揺らぎません。
消える仕事:「とりあえず試したい」案件
一方で、溶けていく仕事があります。PoC(実証実験)や、「とりあえず作って試してみたい」というレベルのものです。
精度をシビアに問われるわけでもない。止まっても誰も困らない。まず動くものを見て判断したい。こういう案件は、これまで受託側にとっておいしい入口でした。
ここが真っ先に溶けます。発注元が自分で作れてしまうからです。
具体例を出します。私はいま、性格の違う2つのものを作っています。
1件は、ある研究室から依頼された簡易的な操船シミュレータです。以前なら要件を聞いて、見積もりを出して、エンジニアが何週間か入る案件でした。それが、1週間でできます。
もう1件は、船舶の位置情報を地図上に表示する仕組みです。これは誰かに頼まれたものではありません。「とりあえず見てみたい」と私が自分で考え出して、自分で形にしたプロジェクトです。
この2件の対比が、今回の話の縮図です。受託の実装単価は下がり、「とりあえず試したい」レベルのものは、思いついた本人がそのまま作れてしまう。わざわざ外注する理由が消えていきます。
私はSIer(システム開発を請け負う会社)の知見を持った人間です。その私の手元で、実装に金を払う必然性が薄れていくのが、いままさに起きています。
ここからは受託・下請けの話:崩れ方は「下から」
ここは耳の痛い話を含むので、正直に書きます。
実装に払う対価が下がると、最初に影響を受けるのは受託・下請けの世界です。仕事が目に見えて減るのは、来年(2027年)4月以降だと見ています。
理由は予算の流れです。大企業の来年度予算、つまり2027年4月からの動きは、だいたい今年(2026年)9月ごろに固まります。自前で作れると気づいた発注元は、外注の予算を削ります。その結果が表に出るのが来年4月以降です。
受託側がこの変化に気づくのは、今年の秋、10月以降でしょう。気づいてから動いたのでは遅い、というのが私の見立てです。
そしてSIerの世界は多重下請けでできています。元請けがいて、その下に2次請け、3次請けと続く。仕事が減ると、この構造は下から崩れます。元請けは自分の取り分から削りません。一番下に流れる仕事から消えます。その一番下を支えているのが、多くの場合フリーランスや個人事業主です。
つまり、最初に仕事を失うのは、構造の一番下にいる人たちです。ここは厳しいですが、目をそらしても始まりません。
残る側に立つ一手(1)専門性を持つ人と組む
ここからは前向きな話です。消える側に立たないために、私自身がいま動いている3つを、そのまま書きます。
1つ目は、専門性を持つ人と組むことです。
実装単体の価値が下がるなら、実装に「掛け算」する中身が要ります。特定の業界の知識、研究領域の深さ、現場のドメイン知識。そういう専門性を持つ人と、人間関係の信頼ベースで組む。私はいま、その動き方に舵を切っています。
誰でも作れるからこそ、「何を作るべきか分かっている人」と組めるかどうかで差がつきます。
残る側に立つ一手(2)大企業の内製化に、いまのうちに入る
2つ目は、大企業の内製化の中に入ることです。
これから大企業は間違いなく内製化に動きます。自前で作れるなら、外注を減らして社内で回したい。自然な流れです。
ただし、「AIをどう使っていいか分からない」という大企業が山のようにあります。作れる環境は手に入っても、何から手をつけ、どう社員に使わせるかが分からない。ここに入る余地があります。
内製化が完成してから声をかけても遅い。立ち上げで迷っている、いまのうちに中に入っておくことが重要です。 動こうとしている企業はもうたくさんあります。
残る側に立つ一手(3)発注元と直接つながる小チーム
3つ目は、多重下請けから抜けて、発注元と直接つながる小さなチームになることです。
下請けの何次にも分かれた構造の中にいる限り、仕事が減ったときに真っ先に切られます。そうではなく、発注元と直接つながり、少人数で機動的に動くチームでやる。これは構造として正しい方向です。
実装の単価が下がる時代に、間に何社も挟んでマージンを抜く構造は、もう支えきれなくなります。
これからのエンジニアに、営業・マーケ力が要る理由
3つの一手に共通する根っこを言います。これからはエンジニアにも、営業力やマーケティング力が必要になります。
専門性のある人と組むのも、大企業の内製化に入るのも、発注元と直接つながるのも、すべて「自分で仕事を取りにいく力」が前提です。技術だけ磨いて下請けの列に並んでいれば食えた時代が、終わろうとしています。
それができないなら、せめて大企業の内製化チームの中に、早く組み込まれておくことです。中に入ってしまえば、自分で営業しなくても仕事は回ります。動こうとしている企業がたくさんある、いまが入りどきです。待っていても椅子は増えません。むしろ減ります。
私が技術顧問として最初にやること
私はいま、AI×IoTの技術顧問として、企業に継続で入る形で仕事をしています。受託開発(請負)ではありません。
技術顧問として最初にやるのは、「どこを内製化し、どこは外に出すか」の線引きを一緒に決めることです。正確性と無停止が命の領域は慎重に。試して判断したいだけの部分は、社内でバイブコーディングを回せるように伴走する。この見極めだけで、無駄な外注予算は大きく減らせます。
発注側にとっては、これは内製化を進める伴走者の話です。仕事を担う側にとっては、自分がどちら側に立つべきかを決める話です。詳しくはAI技術顧問サービスの詳細に書いています。
まとめ
- これまでのAIの進化スピードを考えると、来年には技術がない人でも思いついたアプリを世界に公開できる時代が来ると予想する。公開の壁がWindowsのCopilotで消え、OSの普及力でキャズムを一気に超える。
- 消えない仕事は、正確性と無停止が命の領域(基幹系・顧客データベース・金融)。消えるのは「とりあえず試したい」PoC・試作系で、発注元が自分で作れるようになる。
- 仕事が減るのは来年4月以降。大企業の予算が今年9月に固まり、外注が削られる。SIerの多重下請けは下から崩れ、最初に影響を受けるのは構造の一番下。
- 残る側に立つ一手は3つ。専門性を持つ人と組む、大企業の内製化にいまのうちに入る、発注元と直接つながる小チームになる。共通して、エンジニアにも営業・マーケ力が要る時代になる。
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この記事の内容について、現場で整理したい方へ
AI×IoTの技術顧問として、月額契約で継続伴走しています。PoC設計・技術判断・組織設計・ベンダー管理・実装支援まで、現場で動くまで一緒に進めます。受託開発(請負)ではありません。
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