【Claude.ai/30分】営業アシスタントを箇条書きで作った話|AI内製化に必要な4つの判断軸

【Claude.ai/30分】営業アシスタントを箇条書きで作った話|AI内製化に必要な4つの判断軸

「欲しいをすぐ形にできる」と書くと大げさに聞こえますが、先日、私はそれを実際に体験しました。

営業アシスタントを4機能、30分で作りました。コードは1行も書いていません。やったのは、欲しい機能を箇条書きでチャットに書き、エンターキーを押しただけです。

この記事では、その実体験を起点に、個人がチャットだけでアシスタントを作れる時代に、AI技術顧問の役割は何か を整理します。経営層・DX担当者・個人事業主のいずれの立場の方にも、判断のヒントになる内容です。

1年前なら、これは数カ月コースだった

普通にこの4機能を作ろうとすると、こうなります。

  • Webから情報を集めてくる仕組みを作る
  • 決まった時間に自動で動かす仕組みを設定する
  • Slackに通知を飛ばす仕組みをつなぐ
  • 集めた情報を保存する場所を用意する
  • 結果を読みやすい見た目に整える
  • 動いた記録を残し、不具合が起きたときに対処する仕組みを入れる

ここまでで、エンジニアでも数日〜1週間コース。エンジニアでなければ、外注して数百万円コース。それが30分で出来た。1年前にはありえなかった速度です。

何が変わったか。「コードでやってほしいことを書く」必要がなくなりました。代わりに「やってほしいことを自然な日本語で書く」だけで動くようになりました。具体的に何を書いたかを、4機能それぞれで見ていきます。

何を作ったか:4機能の全容

私が独立準備中の自分のために作った機能は、この4つです。

  • 補助金の新規調査:自分のスキルとつくばみらい市・茨城県の地域要件にマッチする補助金・公募・入札を毎日自動で調査
  • 目標達成に向けた日々のタスク計画:創業計画から逆算したアクションプランを月別・週別・日別に管理
  • 毎朝7時のブリーフィングと進捗報告会:今日のタスクと昨日以前の未完了タスクを毎朝自動で整理、進捗を更新
  • 売上目標と見通しの計画:4つの収益の柱の進捗を把握し、撤退基準との距離を毎週確認

それぞれ、最初は本当に短い指示文で作りました。以下、具体的に紹介します。

補助金調査スキル:最初の指示文

最初に書いた指示は、こんな粒度です。

あなたは公募・入札・補助金調査アシスタントです。 私のスキル(AI・ロボティクス・IoT・DX教育・画像認識)にマッチする公募を毎日Web検索してください。 つくばみらい市・茨城県内を優先しつつ、リモート対応可能な全国案件も含めてください。 結果を 04_公募一覧.xlsx に記録してください。 優先度A・B・C で分類、マッチ度を5段階で評価してください。

これでスキルとして登録しました。後はチャットで「補助金調査して」と頼むと、Web検索を回して、xlsxに記録するところまで自動です。

最初の数日は、出力に物足りなさが出ます。「優先度の判定基準が甘い」「同じ案件を何度も入れてくる」「マッチしない案件まで推薦してくる」など。

そこで都度こう追加します。

優先度の判定基準を厳しくしてください。法人格が必要な案件は私が個人事業段階なのでマッチ度2以下にしてください。 講師業よりも技術アドバイザー・顧問系の案件を優先してください。 URL重複チェックを追加してください。

これも全部チャットで指示するだけ。コードを書く感覚は1ミリもありません。人を新しい職場に慣れてもらうとき、口頭で「ここはこうしてほしい」と伝える感覚 に近い。違いは、AIは1度伝えたら忘れない点だけです。

タスク計画+売上見通しスキル:シビアに指摘してくれる相手を作る

このスキルで重要だったのは、「シビアに指摘してほしい」という方針を最初に書いたことです。

あなたは創業計画の進捗管理・見直しアシスタントです。 02_事業の具体的内容.docx03_実行計画.xlsx を常に最新に保ってください。 進捗報告を受けたら即時反映してください。 計画レビューでは、シビアに非現実的な部分を指摘してください。 売上見込みには根拠を問うてください。 批判だけで終わらず、必ず具体的な代替案・修正案を添えてください。

ここがコツです。「丁寧に対応してください」と書くと、当たり障りのないアシスタントになります。「シビアに突き詰めてください」と書くと、シビアになります。

実際、このスキルは私の進捗報告に対して、こういう返しをしてきます。

初回ミーティングがうまくいった、というのは入口です。次の提案書のクオリティで、二度目があるかが全部決まる。納期はいつですか?

これは私が指示として「良いニュースには素直に認める。ただし褒めて終わりにしない。次に失敗するとしたらどこかを続ける」と書いた結果です。AIに「役割」と「禁止事項」を伝えるだけで、ここまで性格を作れる時代になりました。

朝7時ブリーフィングスキル:他スキルのハブとして動かす

これは複数スキルを組み合わせる例です。最初の指示はこうでした。

あなたは毎朝の日次タスクブリーフィングを行うアシスタントです。 03_実行計画.xlsx を読み込み、今日のタスクを抽出してください。 昨日以前の未完了タスクを洗い出し、状況を確認してください。 ユーザーから完了/未完了の回答を受けて xlsx を更新してください。 朝のブリーフィングらしく簡潔に。長文は不要です。

毎朝7時に自動でこれが動きます。動かしているうちに「SNSの最新数値も毎朝知りたい」「未完了タスクが3件以上あれば率直に指摘してほしい」と感じるようになり、追加で別スキル(SNS状況取得)を呼ぶように指示しました。

スキル同士が連携する設計を、コードを書かずにチャットだけで組み立てられる。これが30分で営業アシスタントが完成する仕組みの正体です。

「箇条書きでエンター」が動く理由

ここまで読んで、「本当にそんなに簡単なのか」と疑う方もいるはずです。私自身、最初は半信半疑でした。

仕組みは単純です。世の中のほぼすべてのドキュメント・コード・論文・ベストプラクティスを、AIはすでに学習しています。だから「Web検索してxlsxに記録して」と書けば、Web検索のやり方もxlsxへの書き込み方も知っているし、優先度の付け方や案件の評価軸も知っている。

私たちが指示するのは「何をしてほしいか」だけです。「どうやってやるか」はAIが知っているので、書く必要がない。

これは、新しく入った社員に「顧客に資料を送っておいて」と頼むとき、メールの書き方や送付状のフォーマットを毎回説明しなくて済む状況に似ています。新人が “当たり前の業務マナー” を身につけるまでに数年かかる。AIには最初から入っています。

30分の中身:「だいたい動く」までの時間

正直に書くと、30分は「だいたい動くようになるまで」の時間です。「初日から完璧に動いた」ではありません。

使い始めると、出てくるアウトプットに物足りなさが出てきます。「もう少し優先順位を整理してほしい」「補助金の対象業種でフィルタしてほしい」「同じ案件が3日連続で出てきている」といった具合です。

そういうとき、毎回チャットで追加指示を出すのは面倒なので、「これ、スキルに登録しておいて」と頼みます。すると、スキルが更新され、次回以降は最初から精度の高い結果が返ってきます。

新人教育とは似て非なる、「忘れない」という資産

この改善プロセスは新人教育とよく似ています。最初は粗い、使いながら教える、徐々に精度が上がる。

ただし1点だけ、決定的に違う点があります。人より正確に、確実に記憶してくれる

人を雇うときの「最初の3ヶ月は教育コストが先行する」という覚悟が要りません。教えれば、その瞬間から忘れない。同じ指示を何度も繰り返さずに済む。

これは、個人事業主にとって体感的に大きな変化です。「教育コストはサンクコスト」だった時代から、「教育コストは資産」の時代に変わった。

しかも、AIに育てた指示文は、形式的にはテキストファイル数枚です。引き継ぎコストもゼロに近い。会社が大きくなって人を雇うフェーズに入ったとき、AIに教えた内容をそのまま新人に渡せます。

月100ドルは高いか:生産性で考えれば即答

「Maxプラン100ドル/月は高くないですか」と聞かれることがあります。

私の感覚では、生産性を考えたらケチる理由がありません。とっとと最先端を使ったほうが早い。営業アシスタントが30分でできて、補助金調査が自動で回り、毎朝7時にブリーフィングが届く。これを人を雇って実現する場合と比べたら、桁が違う費用対効果です。

「無料プランでもできるか試してから……」と検討している間に、他の人はもう走り出しています。

なぜ今動くべきか:まだキャズムを越えていない

ここで、ジェフリー・ムーアのキャズム理論 を当てはめてみます。

新しい技術は、市場に普及していく過程で次の5層を通過します。

  • イノベーター(2.5%):技術そのものに興味がある層
  • アーリーアダプター(13.5%):競争優位を求めて先行投資する層
  • アーリーマジョリティ(34%):実用性が確立してから採用する層
  • レイトマジョリティ(34%):周りが使い始めたから採用する層
  • ラガード(16%):最後まで採用しない層

アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には大きな溝があり、これを「キャズム」と呼びます。多くの新技術はキャズムを越えられずに消えていきます。

AIの個人開発・スキル化は、現状ではまだイノベーターとアーリーアダプターの段階です。「Claude Codeで〇〇を作った」「Custom GPTを作った」という発信者は増えましたが、企業の業務に組み込まれている割合はまだ低い。テールの中小企業や自治体には、ほぼ普及していません。

私はこの状況を、経営判断としては明確にチャンスだと捉えています。キャズムを超える前に着手すれば、得られる差は大きい。マジョリティが当たり前に使い始めてからでは、もう差別化要因にはなりません。

では、AI技術顧問の役割は何か

ここまで読んで、こう感じた方もいるかもしれません。「個人がチャットで30分で作れるなら、技術顧問は要らないのでは?」と。

これは考えるべき問いです。私自身、営業アシスタントを30分で作ったあと、自分の仕事の意義をあらためて考えました。

結論はこうです。AIが代替できるのは、すでに言語化されている部分まで。世の中のドキュメント、コード、論文、ベストプラクティスは全部AIが学習済みです。だから「コードを書く」「ドキュメントを書く」「設計図を起こす」といった言語化された作業はチャットで指示するだけで動きます。

しかし、現場で起きていることのうち、人間の感覚値で判断している部分は、まだ言語化されていません。例として、AIに代替されない4つの役割を、私が実際に技術顧問として直面した状況とともに紹介します。

役割1:現場実装力 — 理屈通りに動かない場での判断

PoC(実証実験)がうまくいき、いよいよ本番展開のフェーズに入ったとします。ところが本番で扱うデータは想定より汚い、通信環境は想定より遅い、現場の運用担当はAIの定期的な更新作業に時間を割きたくない。

このとき、何を妥協し、何を死守するかの判断は、AIには出せません。「即時応答は諦めて1時間ごとのまとめ処理で十分か」「精度は82%で実用化に踏み切るか」「既存の業務フローを変えてもらうか」。これは現場の利害関係を全部把握したうえで、技術と組織の両方を見渡せる人間が判断する領域です。

役割2:相手がいる時のコミュニケーション

PoCの最終報告会で、それまで一度も顔を出していなかった決済者が初めて出てきて、「これでは成果物のイメージがわかない」「精度は90%まで出してほしい」と言い出すことがあります。

ここで「契約書には精度保証はないと書いてあります」と正面から返したら、その後の取引は終わります。一方で、全部受け入れたら受託側が破綻します。

着地点を探る交渉、双方の顔を立てる落とし所の設計、次の案件につなげるための言葉選び。これは経験値の塊で、AIには渡せません。

役割3:組織づくりの感覚 — 誰にどの役割を任せるか

中小企業がAI内製化を始めるとき、誰をリーダーにするかが最大の論点です。技術が分かる人がいない、いてもベンダー対応で手一杯、若手は経験不足。

「全員でAIリテラシーを上げよう」という研修プログラムは、ほぼ失敗します。1人を育てて旗振りにする、その1人を選ぶ判断、その1人を経営層が支える体制づくり——この設計こそが内製化の成否を分けます。

「誰が主役か」を見極めて伴走するのは、AIにはできません。

役割4:導入時期の判断 — 技術が成熟する前に入れる判断、組織が受け止められる時期の判断

AIで言うと、技術成熟度と組織受容性の2軸があります。

技術が成熟しすぎてからの導入は、競合と差がつきません。逆に成熟前すぎる導入は、組織が受け止められず途中で頓挫します。

このちょうど良いタイミング を、業界の動向・自社の組織状態・市場の反応・コスト感を全部見ながら判断する。これが技術顧問の中核業務です。

経営層・DX担当・個人事業主が、いま気にすべきこと

立場別に、私がよく聞かれる質問への答えを整理します。

経営層の方へ

Q. 「うちの会社にも個人スピードを取り込みたい。何から手を付けるべきですか?」

A. まず社内で 1人だけ AIで何かを作ってもらうことをお勧めします。全社一斉ではなく、興味のある1人。30分で作って、社内に「こんなのできた」と見せる。そこから空気が変わります。最初の1人を選ぶ判断と、その1人を経営として支える宣言、これだけ最初に決めれば動き始めます。

DX担当の方へ

Q. 「個人スピードと組織導入のギャップを、どう埋めればいいですか?」

A. 個人で作ったAIを そのまま組織に展開しないこと が一番大事です。個人で作ったものは、品質保証もセキュリティもログも甘い。組織で運用するには、そこに「業務継続性」「監査ログ」「権限管理」「失敗時の責任分界」を後付けする必要があります。この設計こそ、外部の技術顧問を使う価値が出る領域です。

個人事業主の方へ

Q. 「自分も30分で何か作りたい。どこから始めればいいですか?」

A. 私の経験では、自分が一番面倒だと思っている繰り返し作業 から始めるのが正解です。私の場合は「補助金調査を毎日やるのが面倒」でした。あなたの場合は何でしょうか。それを箇条書きにして、Claude.aiのスキル機能に貼ってみてください。月100ドルで人生が変わります。

今日から動く3ステップ

最後に、この記事を読んだ方が今日から動けるよう、3ステップで整理します。

  1. Claude.aiのMaxプランに登録する(または既に登録済みなら、カスタムスキル機能を有効化する)
  2. 自分が一番面倒だと感じている繰り返し作業を1つ選ぶ(補助金調査、メール返信、議事録要約、何でも良い)
  3. その作業の手順を箇条書きで5〜7行書いて、スキルとして登録する(30分で動くものができます)

これだけで、AI個人開発の入口に立てます。動いた後、組織に展開する段階で迷ったら、その時点で技術顧問に相談するのが効率的です。

まとめ

  • Claude.aiのカスタムスキル機能を使い、営業アシスタントを4機能、30分で作った。コードは1行も書いていない。
  • 「コードでやることを書く」技術は、もう要らない。箇条書きでエンターを押すだけ で動く時代になった。
  • 改善は新人教育に似ているが、AIは人より正確に記憶する。教育コストが資産になる。
  • Maxプラン100ドル/月は、生産性を考えればケチる理由がない。
  • 個人開発はまだキャズム前。マジョリティが使い始める前に動き出した方が、差別化の余地は大きい。
  • AIが代替できるのは言語化された部分まで。感覚値で判断する領域は、人の経験が残る。AI技術顧問が提供しているのは、まさにそこの判断軸(現場実装力/相手がいる時のコミュニケーション/組織づくりの感覚/導入時期の判断)。

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この記事の内容について、現場で整理したい方へ

AI×IoTの技術顧問として、月額契約で継続伴走しています。PoC設計・技術判断・組織設計・ベンダー管理・実装支援まで、現場で動くまで一緒に進めます。受託開発(請負)ではありません。

AI技術顧問サービスの詳細無料30分オンライン診断料金一覧

About The Author

Hideki
東京大学発AIスタートアップ企業でロボット開発室室長、画像解析室室長、動画解析室室長を務め、AIエンジニアとしても画像認識関連の特許を在籍中に3つ取得。その後、KDDIグループ内でプロダクトリーダーとして自然言語処理パッケージの自社開発を経て、現在はAGRISTのテックリードとして農業の人手不足の解決に向けた収穫ロボットの開発にチャレンジしている。ロボットは技術の総合格闘技との考え方から、AIだけでなく、ハードやエレキ、通信からクラウド、IOTまで幅広く手掛けることができる。最近では人とロボットの共存を目指すべく、性能だけを追い求める開発から「感動やワクワク体験」をデザインできるロボットの研究を進めており、人とロボットがうまく共存できる世界を作り出したいと日々行動している。

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